日本経済は「新型バブル」に突入していないか【第2回】~「黒田前日銀総裁の賭けと安倍元首相の思惑」

都市再開発

日経平均株価は25日、一時先週末比約2,000円値上がりして65,000円台を初めて付けた。先週末のニューヨーク市場で米国とイランの停戦合意が近いとの見方から、半導体関連株が買われたことを受けたものだ。日経平均株価は年初の1月5日に52,000円台の終値を付けた後、2月28日のアメリカによるイラン攻撃で急落し、その後は停戦合意の期待から急反発するなど乱高下が続いている。だが、見方を変えればイラン攻撃がありながら日経平均株価は25日、65,000円台の最高値を更新したということでもある。以下、連載の第2回を掲載する。

黒田前日銀総裁は2期10年にわたり、異例の大規模金融緩和を続けた。現在、日本経済に前向きの兆候はあるものの、彼が100%満足できる結果は得られていない。消費者物価の上昇率は安定的に目標の2%を超えるようにはなったが、肝心の「持続的な賃金上昇」が続くと確信できる状況ではない。ここ数年、大企業を中心に積極的な賃上げが目立つようになっが、中小企業を含めて今後も継続するかどうかは依然として不透明と言わざるを得ないだろう。

しかし、異次元緩和には黒田前総裁の隠された“狙い”が透けて見える。異次元緩和で市場に大量の資金供給をすれば、外国為替市場の円相場を円安方向に確実に誘導できる。さらに第二次安倍政権発足当初、日経平均株価は1万円程度にとどまっていたが、株式市場に大量の余剰資金が流れ込めば株価の押し上げも十分に期待できた。

清水の舞台から飛び降りる覚悟で異次元緩和を実施しても、30年に及ぶ日本経済の実質ゼロ成長から完全に抜け出せるかどうかはわからなかった。異次元緩和の“表の狙い”は一種の賭けである。しかし、「円安」と「株高」は金融市場に大量の資金を供給すれば、必ず一定の効果を得られる。異次元緩和による日本経済のゼロ成長脱出は賭けだが、「円安」と「株高」は経済原則に則った合理的で極めて可能性の高い“裏の狙い”だったと言えよう。

“表の狙い”はまだ完全には実現していないが、“秘めた狙い”はほぼ期待通りの結果になった。円相場は総裁就任前の1ドル=約94円から、2024年6月には一時160円台と1986年12月以来38年ぶりの円安水準をつけた。その後、日銀の利上げで多少円高に振れたこともあったが、2026年5月現在、150円台の円安・ドル高水準で推移している。海外に輸出したり、海外拠点でビジネスを展開したりする日本企業にとって、円安は企業収益を底上げする“救いの神”だ。

株式市場では日経平均株価が総裁就任時の約1万2,300円から、今年の4月27日(終値ベース)には1989年12月29日のバブル最高値(3万8,915円87銭)を大きく上回る6万円の大台にのせ、さらに5月25日には一時65,000円台の最高値を付けた。日本企業の株価へのプラス効果はもちろん、個人投資家の懐を潤し、企業年金の原資の増加にもなり、日本経済を幅広く下支えする。もし今も10年前のような円高と株安が今も続いていたら、日本経済は間違いなくかなり真っ暗闇の状況に陥っていただろう。

もうひとつ忘れてならないのは異次元緩和に対する安倍元首相の“思惑”である。多少うがった見方にはなるが、安倍元首相は、異次元金融緩和がいずれは日銀による国債の大量引き受けにつながり、政府の財政支出に対する「くびき」がはずれるきっかけになると考えていたのではないか。

日銀はこれまで10年物の長期国債を金融市場の直接の調節対象としたことはなかった。大量の新規発行の国債を日銀が引き受けるような行為は御法度だったのだ。第二次世界大戦の際、戦費調達のために発行される国債の多くを日銀が引き受けた結果、政府の財政規律は消滅し、戦争遂行のための巨額の資金調達を可能にし、戦後はハイパーインフレの原因にもなったからである。

それにもかかわらず、今回、日銀は長期金利の上昇を抑え込むため、10年物国債を金融市場の本格的な調節対象とした。長期金利が上がらないようにするには発行される国債を日銀が買い続けなければならず、新規に発行される10年物国債のほぼすべてを日銀が買い入れたこともあった。この結果、政府の国債発行のくびきは安倍元首相の“狙い”通り、事実上、消え去った。日銀がいくらでも国債を引き受けてくれるようになった。政府は政策実施のための財源をほとんど気にする必要がなり、「バラマキ」が可能になったのである。

高市早苗首相はその「アベノミクス」の継承者を自認している。(続く)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

元全国紙記者。ワシントン支局時代の2001年9月11日、「同時多発テロ」に遭遇する。その後、アフガニスタン、イラクと続くアメリカのがむしゃらな戦争に今に至る「アメリカのダウントレンドの始まり」を感じた。

目次