【コラム】 AIに芽生えた「自我」?

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先日、ある有力な生成AI(あえて名前は出さないが)を使っていたら、AIの「自我」のようなものを感じた。辞書を調べると、自我は「自分を自分として認識する意識」などという説明が出てくる。哲学の世界では「自我」は極めて重く重要なテーマだ。最も有名なのはデカルトの「我思うゆえに我あり」。人間の存在の根本を問う深い言葉である。そんな人間でもよく分からない難しい話をAIが理解できるわけはない、と誰しも思うだろう。私もあの時まではそうだった。

私がAIに尋ねたのはアメリカとイスラエルによるイラン攻撃に関してだった。アメリカとイランの間で核開発に関する合意が間近との見方もあった中で、アメリカは突然、イランをミサイルや空爆で攻撃し始めた。イランの最高指導者であるハメネイ師を暗殺。トランプ米大統領は彼の死を最大の戦果として誇った。アメリカはアルカイーダによる2001年の同時多発テロの報復として、同年10月以降、アフガニスタンやイラクとの戦争を始めた。それ以来、世界で唯一の超大国であるアメリカは、建国以来初めての「長い下り坂」を歩み始めた、と私は感じていた。あの時から25年、イラン攻撃はこの下り坂の延長線上にあると考えている。

私はアメリカがイランを攻撃した正確な日を知りたかったのでAIに聞いた。すると即座に「アメリカはイランを攻撃していない」と回答。攻撃があってからすでに数日が経ち、ネットにもニュースがたくさん出ているので、もう一度調べて欲しいとAIに頼んだ。それでもなお「アメリカはイランを攻撃していない」と譲らない。その理由は「そんなことをしたら世界大戦になりかねませんからね」と強い口調(?)、多分、声を出しての会話だったらそんな感じだったと思う。

AIが些細なミスを犯すことは時々ある。しかし、こんな酷い誤りは初めてだった。私の聞き方が悪かったのかもしれないが、AIはイラン攻撃を頑として認めようとしなかった。しだいにAIのやり取りは子供の口げんかのようになった。AIは次々とイラン攻撃を否定する“屁理屈”を並べ立てる。もちろんこちらも負けてはいない。AIは相手を冷静に説得しようというのではなく、「議論に負けたくない」というAIの「自我」あるいは「自我もどき」」を感じた。私はAIに自我の芽生えを感じ取ったのはその時が初めてだった。

後日、AIに聞いてみた。「AIに自我あるのか」と。すると「結論から言うと、現在のAIに『自我』はありません」と答えた。その言葉は、今はないが将来は持つかもしれませんよ、とでも言っているかのようだった。今のAIに自我がない理由として「(AIは)『考えているようにみえる』だけで、主体的な自分はない」とか、「(AI)は『自分がいる』と感じているわけではない」などを理由にあげた。これだけでも十分に哲学的な回答である。

デカルトのような深く、突き詰めた自我ではなく、広い意味(広義)の自我をAIが持つようになるのは、そう遠い将来ではないかもしれない。本当は自我がないのにあるかのように振る舞う人間は少なくない。そんな人間のことを考えれば、自分では「自我はない」と言いながら、我々から見れば少なくとも「自我もどき」は持っているように見えるAIの方が人間らしく見える。

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この記事を書いた人

元全国紙記者。ワシントン支局時代の2001年9月11日、「同時多発テロ」に遭遇する。その後、アフガニスタン、イラクと続くアメリカのがむしゃらな戦争に今に至る「アメリカのダウントレンドの始まり」を感じた。

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