自民大勝させたSNS世代の若者、はや高市離れか~SNSが政治を不安定にする懸念現実に?

人口の全てが「SNS世代」になり投票するイメージ図

2月の衆院選で自民党大勝の原動力となったSNS世代の若者層が、早くも高市早苗政権離れの兆しをみせている。

主要な新聞社が7月中下旬に実施した世論調査によれば、10代~30代の若者層の高市政権への支持率は、前回調査比10㌽前後の大幅な下落となった。

若者はSNSの閉ざされた仲間内の情報の影響を受けやすく、その時々で支持する政治家や政党が変わりやすいとされる。

半年足らずの高市離れ、それが本物だとすれば、SNS世代の若者が政治を振幅の大きい、不安定なものにしかねないとの懸念が現実になり始めている可能性がある。

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7月の世論調査、若者の高市政権の支持率が軒並み急落

日経新聞とテレビ東京が実施した世論調査によれば、年代別の支持率はもともと高かった「39歳以下」の若者層が67%となり、前回6月の調査に比べて11㌽と大幅に下落した。全世代の支持率は58%で前回から10㌽の下落。若者世代の下落幅はわずかだが全世代を上回っている。

朝日新聞の調査では、30代の支持率は前回6月の調査から22㌽も低い50%となった。「半年前のピーク時の87%に比べると37㌽が吹き飛んだ計算になる」という。

さらに読売新聞の調査によれば、年代別では18歳~39歳が64%と前回を7㌽下回った。全世代の下落幅の12㌽を下回ったが、予想外の大きな下落になった。2月の衆院選の自民大勝をもたらした10代~30代の若者層の支持率が、政権発足当初から低かった40代以降の中高年層と足並みを合わせる形で急落したことが特徴だ。

SNSが生んだ若者の薄い高市支持が剥離し始めた?

なぜ今回、若い世代の支持率が落ち込んだのか。新聞各紙に共通するのは、高市政権が皇室典範の見直しや、国旗損壊の処罰などに力を入れ、彼らにとって身近な景気や経済問題に積極的に取り組んでこなかったという分析だ。

加えて2月の衆院選で若者のSNSで盛り上がった高市人気が、約半年経った今、“賞味期限”が来つつあるとの見方もある。

衆院選で高市政権を強く支持した若者層は、必ずしも高市首相や自民党の政策を熟慮した上での支持ではなかった可能性がある。初の女性総理というSNSの高市人気に、一種の祭りに参加するような「ノリ」で加わり、高市支持(=自民党支持)に回った格好。

厳しい言い方をすれば、その紙のように薄くて軽い高市支持が半年経って剥離し始めたのではないだろうか。

SNSの若者の声を拾ってみよう。10代~30代の若者層は新聞やテレビなどの伝統的なマスメディアはほとんど使わず、情報収集は「SNS一択」に近い。

最近のSNSにみられる若者の関心事は、イデオロギー的なことよりも、「手取りが増えるか」「家賃や食費は下がるか」といった生活実感に関わるものに集中している。

そんな若者の目に高市首相は「物価高より皇室議論を優先している」「期待していた経済政策が進まない」と映ったのかもしれない。

首相が強いこだわりをみせる食料品の消費税減税についても、若者の間に強い反対意見は少ないが、「食料品だけでは不十分」「期間限定ではダメ」「社会保険料も重い」などと距離を置いた声が目立つ。首相の意気込みと若者の期待感の間には開きがあるようにみえる。

さらに7月下旬の高市首相の「0~3時間睡眠が常態化」というXへの投稿に関しては、「寝てください」「睡眠不足を自慢されても困る」などと同情論よりも、突き放した感じの投稿が目立ったという。

SNS若者層の選挙行動、25年参院選から大きく変わり始める

長い間、若者の選挙への関心は“超低空飛行”を続けていた。「どうせ自分が投票しても世の中は変わらない」と諦めにも似た感情が強く、投票率も世代別で最下位グループの常連だった。

その若者の姿勢が変わり始めたのは、2024年に実施された国政と地方の選挙からだ。この年の選挙は、SNSが初めて本格的に使われるようになった「デジタル選挙元年」とも呼ばれる。

若者はSNSで話題になっている“政治的なテーマ”について情報交換するようになり、結果として選挙にも関心を持つようになったという。この流れを引き継いだ25年7月の参院選で、若者の投票行動の変化が鮮明になった。

2年前の前回参院選に比べた10代~30代の投票率は軒並み10㌽前後と大幅に上昇、中でも20代の上昇率は14㌽に達した。そして若者世代の国政選挙への強い影響力を確信させたのが今年2月の衆院選挙だった。

衆院選の投票日の2月8日は全国的に雪あるいは氷雨の天気で、投票率はかなり落ちるのではないかと心配された。しかし、ふたを開けてみると56.26%と前回2024年10月の衆院選挙(53.85%、天気は曇り)を2.41%上回った。

総務省の「よくわかる投票率」(抽出調査)によれば、前回に比べた投票率の上昇幅は10代(18歳、19歳)が4.02%、20代前半(20歳~24歳)は3.63%、20代後半(25歳~29歳)・5.20%、30代前半・5.06%、30代後半・5.39%だった。

厳しい天候を考えれば予想外に大きな上昇幅だったと言える。特に10代の投票率は51.47%となり、18歳以上に選挙権が認められた16年以降で最高を記録した。一方、40代以降70代までの投票率の変化は単純平均で約2.0%の上昇だった。

NHKが25年7月の参院選前(3月~5月)に実施した「投票行動とメディア 世論調査」(18歳以上の3,600人対象)という調査がある。

それによると、若者世代が「政治ニュースに接触するメディア」(複数回答、上位5項目)として、SNSや動画共有サービスなどの「ネット系メディア」をあげる回答が圧倒的に多かった。

40歳以降の中高年層の場合、個人によって異なるものの、概ね新聞やテレビを使って政治、経済、防衛など広い分野の情報を収集し、異なる政党や政治家の意見も聞き、最後に熟慮の上で投票するというパターンが多い。

一方、若者はSNS上で盛り上がっている候補者やテーマの中から、自分が共感できる一種の「推し」の対象を探す。中高年層のように意識的に幅広い情報を集めたり、意見の異なる人の話を積極的に聞いたりすることは少ないようだ。

投票するかしないかの判断は、言ってみれば「推し候補」と「推しテーマ」に関する「切り抜き動画」にかかっていると言えるかもしれない。

若者層の政権支持、25年の参院選以降、半年ごとに大きく振れる傾向

昨年7月の参院選では石破茂首相率いる自民党は大敗し、国民民主党や参政党の議席が大きく増えた。

反対に今年2月の衆院選では、高市首相率いる自民党の議席は316と単独で三分の二を超える歴史的な大勝利を遂げた。

2つの選挙のわずか半年余りの間に、自民党の「中身」が大きく変わったわけではない。

昨年10月、高市氏が石破氏後継の自民党総裁に選ばれ、その後、日本の憲政史上初の女性総理になったことを除けば、政治と金の問題を含めて何一つ大きく変わったものはない。

衆院選の最大のテーマは初の女性総理である高市首相の人気に乗るか、乗らないかの選択だったと言える。

そして大勝利をおさめてからわずか半年後、今度は政権支持率の急落という“洗礼”に見舞われる。

自民党が大敗した25年の参院選、自民が大勝した半年後の衆院選、さらにその半年後の7月の高市内閣の支持率の急落。ほぼ半年ごとに大きな変化が起きている格好になる。

この振幅の激しい現象を引き起こしている“主役”がSNS世代の10代~30代の若者層と考えられる。もちろん7月の世論調査の急落も何かのきっかけで再び急上昇することも考えられるのだが。

いずれは国民全てが「SNS世代」に、その時日本の政治と民主主義に何が起こるか

若者の投票率は以前に比べれば高くなったが、それでも40代以降の中高年層に比較すればまだ低く、上昇余地は残っている。つまり若者が選挙に与える影響はさらに高まる可能性があるということだ。

もっと言えば、日本の人口の三分の一を占める65歳以上の高齢者はいずれ表舞台から去る。

そうなればSNS世代は今のような「若者限定」ではなく、「日本人全員」がSNS世代に変わる可能性もある。

その時、日本の政治は一体どうなっているのだろうか。SNSでほとんどすべての投票行動を完結させる選挙民と、SNSを利用し尽くすポピュリスト的な政治家。両者が互いにスパイラル的に作用し合い、日本の政治を著しく不安定にする恐れはないのか。

もし、懸念が現実のものとなっていれば、2025年以降の若者の変化が日本の政治と民主主義を根底から変える出発点だったことに気づくはずである。

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この記事を書いた人

元全国紙記者。ワシントン支局時代の2001年9月11日、「同時多発テロ」に遭遇する。その後、アフガニスタン、イラクと続くアメリカのがむしゃらな戦争に今に至る「アメリカのダウントレンドの始まり」を感じた。

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